マチコアイシテル 3話
―血まみれの男ー
男の様子はあきらかに変だった。
年の頃は二十代の中頃、
背広姿が様になっているから、
サラリーマンといったところか。
カウンターの上に肘をついて、自分の両手を見ながら
何やらブツブツとつぶやいている。
ママが男の側に近寄って行ったので、
私はママの側にピッタリとくっつくように席を移動した。
「その手の血はどうしたの ? 」
とママが静かに話しかける。
私は初めて男の手のひらが血だらけなのに気がついた。
この男・・・人でも殺して来たか・・・
と思わず身構えたが、ママは目で私を止めた。
そして男の耳元で、
「自分でやったのね・・・」とささやいた。
つづく