白河甚平と吠え壺の創作小説(ハレルヤ館)

YouTube用の朗読動画のための小説と挿絵のUP、ハレルヤ館(ココナラ)でご依頼いただいた作品をUPしております。

マチコアイシテル 1話

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―彼岸の浜辺―

昭日町(あけびまち)の自宅にいた。

机の上には何も書いていない原稿用紙が乗っている。

明日提出しないといけないのだが、

何を書けばいいのか分からなくて

さっきから溜息ばかりついている。

私はもう考えるのをやめた。

いくら考えても書けない時は書けないのだ。

 

 

 

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「なあ、ゴンそうだろ」

膝の上でゴンが気持ち良さそうに寝ている。

首の回りを掻いてやると、喉をゴロゴロ鳴らし始めた。

灰色で短めの毛、精悍な顔は、お世辞にも可愛いとは言えない。

そう言えばゴンは、子供の頃からこんな顔だった。

ゴンを見た人は皆同じ事を言う。

「大きい猫だねえ」「恐い!」「日本の猫じゃないね」

要するにゴンは可愛くないのだ。

でも、それは誤解だ。

私にとってゴンほど賢くて可愛い猫は他に無い。

 

 


しばらくゴンを撫でてぼんやりしていたが、

急に外に出かけたくなった。

私はゴンを籠の中に寝かせ、

お気に入りのブルーのコートを羽織り外に出た。

 

 

 

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今日もいい天気だ。

空は青く澄み切って、小鳥達が群れをなして飛んで行く。

海岸に出ようか、町に出ようかと迷った挙句、

私の足はやっぱりママの店に向いていた。

 

 

つづく

 

 

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